お米と農産物先物市場

― 令和の米騒動と先物取引の意義 ―

2026-05-13

はじめに
第1章 令和の米騒動 ― 米が不足する時代に入った
第2章 金融論的視点 ― 先物は資本主義の最高の花
第3章 先物取引誕生の歴史
第4章 概算金・買取り・委託販売 ― 堂島と連動する必然
第5章 常識と非常識 ― 70年の空白を埋める
第6章 大正米騒動の教訓 ― 鈴木商店の悲劇
結び
質疑応答

第2章 金融論的視点 ― 先物は資本主義の最高の花

 せっかく金融論の講義ですので、金融論らしい話をします。ヒルファディングという人物をご存じでしょうか。オーストリアの研究者でドイツの大臣も務め、『金融資本論』を著しました。彼はこう言います。
「投機は資本主義の最高の花であり、最も深い根である」
 「投機」とは先物取引と読み替えてかまいません。先物取引がなければ資本主義は成り立たない、という主張です。
 ここで問題は、リスクを誰が引き受けるのかです。国がすべて負担するという考え方もありますが、自由主義経済で財政にも限界がありますから、それはできない。世の中には自らの才覚と責任の範囲で、「高くなる」と見れば買い、利益が出れば売り、「安くなる」と見れば先に売っておく、そういう人がいます。これをスペキュレーター、あるいはリスクテイカーと呼びます。リスクテイカーがいるからこそ、市場の資金が途切れない。そしてその金銭のやり取りを確実にするために、法律で清算機関が置かれ、不払いや逃亡が起きない仕組みになっています。
 ピアニストのホロヴィッツも「If you don't take risk, you are boring.」と言っています。リスクを取る気持ちがなければ世の中は退屈だ、と。ただし、借金や家庭を犠牲にしてまで取るものではない。自分の責任と才覚の範囲でリスクを取る、これが肝心です。
 明治大学の作山教授はこう述べています。「転作を廃止し、価格低下に伴う生産者の損失は直接支払いで補填すればよい。転作を廃止すれば米の消費者価格は高騰前の半分以下になり、特に消費量の多い低所得者には朗報だ」 ― 市場に任せれば消費者負担は減り、生産者は財政負担で価格下落リスクから守られ、現在の生産者と消費者の対立構造は解消される。財政的にもその方が助かるという主張です。

(⇒次回 第3章 先物取引誕生の歴史
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