お米と農産物先物市場

― 令和の米騒動と先物取引の意義 ―

2026-05-20

はじめに
第1章 令和の米騒動 ― 米が不足する時代に入った
第2章 金融論的視点 ― 先物は資本主義の最高の花
第3章 先物取引誕生の歴史
第4章 概算金・買取り・委託販売 ― 堂島と連動する必然
第5章 常識と非常識 ― 70年の空白を埋める
第6章 大正米騒動の教訓 ― 鈴木商店の悲劇
結び
質疑応答

結び

 本日はいろいろお話ししましたが、最後にこれだけ覚えて帰ってください。
 「先物取引は産業のインフラである。世界的にはそれが常識だ」
 ご清聴ありがとうございました。


質疑応答

【林先生】 統計の見せ方によって印象が大きく変わる、という話がありました。作為的なグラフが作れるのは事実です。力作の話で思い出しましたが、エクアドルを訪ねたときに現地の日本人がイチゴの品種改良をしていた。あそこは花もたくさん作れる土地柄で、何回転もできるからです。まさに石垣島の2期作と同じ発想ですね。


【林先生】 【林先生】質問の一つ目です。今回の米騒動で70万トン不足していた事実を、役所が認めるのが遅れたのはなぜでしょうか。

【渡辺先生】 役所は一度決めたことを絶対に変えません。そして先延ばしにする。私は昨年4月の時点で「足りていない」と多くの人の前でも伝えていました。2023年秋の収穫時は大学生と一緒に田んぼに入り、籾摺りしてみて、玄米にしても白い未熟粒が多い、― 「これはひどい、作況と田んぼでの感覚は違うぞ」と話していました。
「新基本計画」の説明会でも「コメ不足」を指摘したのですが、作況と需給計画に拘わり、「収穫予想は前年より18万トン増、しかもJA全農に21万トン米が集まっていない」、「どこかで流通がスタックしている」と流通スタック論に傾いていた。農家の感覚と役所の統計の感覚は違います。統計部門は全盛期に2万人いた人員が今は500人か600人ほどです。もう一度考え直してほしい、と進言しましたが通らなかった。2025年の夏になって、最後は「見通しを誤った」と自民党で謝罪しました。ただし、そのときでさえ「生産は誤りなかった、需要が急に増えた」という説明でした。そんなはずはないのです。(作山教授の「インバウンドが大幅に増えた事実はない」という説明を理解してほしい)『過ちを改むるに憚ることなかれ』に反した対応でした。


【林先生】 【林先生】先物市場は今回きちんと機能したのか。機能していないとすれば、なぜか。

【渡辺先生】 堂島米平均指数取引の課題は三つあります。
第一に、最も重要なのは流動性ですが、70年以上もの長い不在だったため、参加の仕方がわからない。ネット参加の時代ですから、勧誘で引き込むというより自分で調べて入るしかなく、方法がわかりにくい。
第二に、平均指数ですから、自分が売り買いしたい米との銘柄間換算ができていない。換算表が必要で、できれば、公正な第三者機関による格付け表があると望ましい。それがあれば自分の米のプレミアム・ディスカウントが把握できます。
第三に、限月(最終取引日)の価格が、現物市場の価格と大きく乖離している。本来、先物の最終限月は現物価格に収斂するのが大原則です。そこがまだ未完成です。
この三つをクリアすれば、堂島の先物指数は生産者・流通業者に選ばれていくと思います。


【林先生】 今回の備蓄米放出の仕方について、もう少し工夫の余地はなかったのですか。

【渡辺先生】 最初の入札による放出には三つの欠点がありました。Too late(遅すぎ)、Too small(少なすぎ)、Too far(消費者から遠い)。放出先がJA・卸だったため精米して消費者に届くまでに時間がかかりすぎた。ただ入札ですから国は数百億円の売却益を上げています。
 小泉大臣の随意契約による放出は、この三つの欠点を補うための非常手段でした。「ジャブジャブになるまで出す」と発言したのが批判を浴びた。「十分に」だと国民は心配する。「十二分に」と言ってくれれば響いたかもしれません。
 ただし、あれは正確には米の放出というよりも、政府が保有する古い在庫物品を処分した、というのが実態です。随意契約とはそういうものです。後任の鈴木大臣も「令和4年米・5年米は食べられない」と発言しています。では、食べられない備蓄米とは何だったのか、と問いたくなる。
 今度の食糧法改正では、備蓄の一部(100万トンのうち20万トン程)を民間業者に持たせる実験が始まっています。民間事業者は自社工場で常時精米しているので、緊急時にもすぐ小売りへ回せる。Too farの欠点は一部解消できそうです。ただし現時点では実験段階で、運用方法は確定していないと聞いています。

(完)
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